イスタンブールの歴史がわかる本おすすめ14選

イスタンブール(İstanbul)の歴史は、古代ギリシャに始まり、ローマ、ビザンツ、オスマン帝国と主役を変えながら今も続く、伝説のような物語です。1985年には旧市街の歴史的な地区が「イスタンブール歴史地域」としてユネスコの世界遺産に登録され、その価値は国際的にも認められています。回想録から地図帳、事典まで、この街の歴史をそれぞれ違う角度から伝えてくれるおすすめの本が14冊あります。
1. イスタンブールの中心

トルコの作家で画家でもあったマリク・アクセル(Malik Aksel、1901〜1987)が1977年に発表した一冊です。古い時代のイスタンブールの風習や夜の街の様子、都市の成り立ちを、著者は実際にその目で見てきました。本書はその記憶の記録です。当時の娯楽文化や職人、芸人たちの姿が、懐かしさと生々しさの入り混じった筆致で描かれています。
2. イスタンブールからのページ

現代トルコを代表する歴史家の一人、イルベル・オルタイル博士(İlber Ortaylı、1947〜2026)が1987年に発表した著作です。新聞や雑誌に連載したイスタンブール論をまとめたもので、スルタンアフメト(Sultanahmet)広場やベヤズト(Beyazıt)、バブアーリ(Babıali)、ベイオール(Beyoğlu)、ペラ(Pera)、タルラバシュ(Tarlabaşı)といった地区の成り立ちと暮らしが語られます。旅行でスルタンアフメト広場を歩いたあとに読むと、地名の一つひとつが具体的な景色と結びつきます。
古き街の空気と現在を比較できる、歴史家ならではの視点が魅力です。
3. ボスポラスの歴史地図

1970年イスタンブール生まれの美術史家でガイドでもあるセダット・ボルノヴァル(Sedat Bornovalı)博士の初の著作です。イスタンブールだけでなく、古代から現代まで数多くの文明が行き交ったボスポラス海峡(Boğaziçi)そのものに焦点を当てています。約2500年前、ペルシャ軍が船をつないで「最初のボスポラス橋」を架けたと伝えられる逸話など、海峡沿いに積み重なった歴史と文化遺産が豊富な図版とともに語られます。著者自身もボスポラス海峡沿いで育った一人です。
4. イスタンブールの歴史・文化・暮らし

研究者で作家のリチャード・ティリングハスト(Richard Tillinghast)が、帝国時代に花開いた建築や文化、芸術から、やがて巨大都市へと変貌していく過程までを描いた一冊です。ビザンツ、オスマン、そして現在のイスタンブールを行き来しながら、街の通り、博物館、宮殿、モスク、教会、市場を小説のような筆致で巡ります。ビザンツの皇帝や聖職者の記憶と、オスマンのスルタンや詩人、神秘主義者たちの物語。その両方が並んで描かれているのが特徴です。
5. ロシア人外交官が見たイスタンブール

パーヴェル・アルテミエヴィチ・レヴァショフ(Pavel Artemyeviç Levaşov)は1763年、ロシアの代理公使としてイスタンブールに赴任し、1771年まで滞在しました。オスマン帝国とロシアの関係が最も緊張していた時期です。1768年に両国間で戦争が始まると、宣戦布告とともにロシア公使館の職員はイェディクレ(Yedikule)に拘束されました。解放後、レヴァショフはその抑留生活を記録に残しました。前半は抑留中の回想、後半はイスタンブールの日常を描いた書簡という構成で、宮廷の内部事情にも触れた貴重な記録になっています。
6. ユダヤ人のイスタンブール

編集者で作家のオクシャン・スヴァスティックス(Okşan Svastics)が、ビザンツ時代から始まり、オスマン時代に続くユダヤ人社会の歴史をまとめました。全186ページとコンパクトながら、オスマン帝国に初めて印刷技術を持ち込んだ人物や初期の都市計画家、彼らが築いたシナゴーグや邸宅など、長く「閉じた社会」として生きてきたユダヤ人コミュニティが街に残した足跡がたどれます。
歴史書というよりも、人物と場所を軸にした記録に近い構成です。
7. イスタンブール、街の秘密

トルコの作家でツアーガイドでもあるファルク・ペキン(Faruk Pekin)は、イスタンブールとカッパドキアをテーマにした著作で知られています。
30年以上にわたり街歩きツアー「アディム・アディム・イスタンブール(Adım Adım İstanbul)」を続けてきた著者が、歴史的な街並みだけでなく、経済、社会、政治の側面からも今のイスタンブールを描き出します。「昔のイスタンブールはもうない」と懐かしむだけでなく、今の街を知り、愛し、未来へつなぐための視点を提示する内容です。
8. イスタンブールの邸宅と別荘

『イスタンブールの霊廟』や『イスタンブールで共に生きる』の著者でもあるセマ・アッコユン・オズバイ(Sema Akkoyun Özbay)が、ボスポラス海峡沿いに並ぶ豪華な邸宅(ヤル)や別荘(キョシュク)を紹介しています。今も目にすることができ、その建築美に惹かれる人が多いこれらの建物は、イスタンブールを象徴する景観の一つです。建築様式や色使い、庭園の造りなど、語り継がれてきた逸話とともに解説されています。
9. イェディクレ・サマトヤ

「イスタンブールの歴史的半島」という副題のとおり、金角湾(Haliç)、ボスポラス海峡、マルマラ海に囲まれた旧市街(スリチ、Suriçi)の一角、サマトヤ(Samatya)地区を取り上げた一冊です。この地で生まれ育ったヌルセル・ギュレナズ(Nursel Gülenaz)とオヤ・コジャ(Oya Koca)の2人が数年かけて地域を観察し、歴史的建造物や街の変遷についてまとめています。意外にも、メインストリートの道筋はビザンツ・オスマン時代から変わっていません。重層的な歴史を持つ地区であることが、こうした点からもわかります。地元の人々への聞き取りを通じて、世代を超えて語り継がれてきた記憶も記録されています。
10. 古きイスタンブール

「古きイスタンブール」という言葉を懐かしむ声は今も絶えません。
オスマン帝国とイスタンブールに関する著作を多く持つメフメト・マザック(Mehmet Mazak)が、その懐かしさの正体に迫る一冊です。ボスポラス海峡とボート文化、飲み物文化、環境と清潔の文化、街の灯りの文化といったテーマを通じて、かつての日常生活の断片を読み解いていきます。
11. ルメリとすばらしきイスタンブール

ムネヴェル・アヤシュル(Münevver Ayaşlı、1906〜1999)は、オスマン帝国末期にサロニカで生まれ、共和国初期の時代も見届けた人物です。小説『ペルテヴ・ベイとその家族』でも知られる著者が、トルコの歴史において重要な位置を占めるルメリ(Rumeli)地方について綴りました。宮廷の恋物語や要人の伝記ではありません。伝えているのは「失われた世界と、そこに生きた人々の記憶」そのものです。
12. ベイオール

イスタンブールを語るうえで欠かせないのがベイオール地区です。
研究者であり作家でもあるトゥラン・アクンジュ(Turan Akıncı)が、19世紀半ばにヨーロッパ各国の公使館が建てられたことから始まったこの地区の歴史をたどります。「グランド・リュ・ド・ペラ(Grande Rue de Péra)」と呼ばれた通り沿いには、やがて西洋式のパサージュやホテル、舞踏場、劇場、映画館が並びました。こうしてこの地区は、オスマン帝国が近代世界へ開いた窓のような街区へと変わっていきました。旧市街のサマトヤ地区を扱った9冊目とは対照的に、こちらは西洋に向けて開かれた街の歴史です。ナウム劇場をはじめ、地区に名を残した建物や人物が章ごとに紹介されています。
13. 作家たちのイスタンブール

ジャーナリストのネシェ・メスウトオウル(Neşe Mesutoğlu)が、トルコを代表する作家や知識人へのインタビューを通してイスタンブールを描いた一冊です。2冊目の著者でもある歴史家イルベル・オルタイルとともに街を「正しく」見る視点を探り、作家ブケット・ウズネル(Buket Uzuner)とともにこの街が与える霊感を追いかけます。写真家アラ・ギュレル(Ara Güler)が自らを「イスタンブールの象徴」と語る場面もあれば、歴史家ヒフズ・トプズ(Hıfzı Topuz)が芸術家たちと過ごした時代を振り返る章もあります。視点は実に多彩です。
14. イスタンブール辞典

リストの最後を飾るのは、見事な事典のような一冊です。歴史家で作家のM. オルハン・バイラク(M. Orhan Bayrak、1926〜2016)は、イスタンブールをテーマにした著作を数多く残しました。本書の紹介によれば、アジアとヨーロッパの両大陸に広がるイスタンブールは、ローマ帝国の首都として65年、ビザンツ帝国の首都として1058年、オスマン帝国の首都として469年という長い歴史を持つとされています。街には数多くの史跡と自然の名所が残っています。本書は城、城壁、モスク、神学校、宮殿、隊商宿、離宮、別荘、塔、図書館、水道橋、貯水池、貯水槽、橋、灯台といった新旧の名称を、アルファベット順の案内として整理したものです。
では、どこから読み始めればよいのでしょうか。街全体の地名を調べたいなら本書や3冊目の地図帳、特定の地区を歩く予定があるなら9冊目のサマトヤや12冊目のベイオールを扱った本が手がかりになります。




















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